サンスターのこと
2019/09/19

サンスターは、加齢とともに減少しがちな亜鉛を、短時間で毛髪内に浸透させ、 若々しく強い髪に導く新ヘアケア技術を開発しました

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サンスターは、椙山(すぎやま)女学園大学 生活科学部の上甲恭平(じょうこう きょうへい)教授の協力のもと、加齢とともに衰える髪質をケアする研究に取り組んできた結果、2014年に毛髪内の亜鉛と髪質(ハリコシ)との関係を明らかにし、また亜鉛を毛髪に浸透させることで、衰えた髪質を改善する新しいヘアケア技術の開発に成功しました。

研究の背景

加齢に伴い毛髪のハリコシが低下して、きれいにまとまらない、思い通りのヘアスタイルが作りにくいという悩みが多くなります。従来はヘアスタイリング剤に含まれるワックス成分や高分子の乾燥皮膜で覆って毛髪の表面を補強する方法が一般的でしたが、手触りがごわごわするといった感触や、毛髪の内側からハリコシを感じにくいことに改善の余地がありました。サンスターは、毛髪の内部の構造を強化することで衰えた髪質を改善して毛髪表面の感触は自然なまま、しなやかでかつハリコシのある毛髪を実現するためのヘアケア技術の開発を目指し、2009年から研究を進めてきました。

開発の経緯

サンスターはまず、加齢とともに毛髪のハリコシが衰える原因は、毛髪の内部の構造が変化するためではないかと考え、様々な調査を行いました。その結果、40代以降では毛髪内の亜鉛が減少することが報告されていました(※1)。さらに、上甲恭平教授は亜鉛が羊毛の細胞膜複合体(以下CMC)に多く存在していることを報告しています(※2)。そこでサンスターはこれらの知見に着目し、加齢とともにハリコシが低下するのは、毛髪のCMCに含まれる亜鉛が加齢により減少しているためではないかと考え、上甲恭平教授と研究を開始しました。

図1.毛髪内の亜鉛

研究結果

1)毛髪のハリコシと亜鉛の関係について
まず、毛髪のCMCに優先的に作用してその構造を変化させるギ酸という酸に毛髪を浸漬し、処理時間を変えてハリコシの官能評価を実施しました。その結果、ギ酸処理時間が長いほど毛髪のハリコシが減少し、ギ酸処理30分では有意にハリコシが減少するという結果が得られました(図2)。さらに、これらの毛髪内の亜鉛量を測定した結果、ギ酸処理時間が長いほど、毛髪内の亜鉛の量も減少していることがわかりました(図3)。このように、毛髪から亜鉛が減少すると、毛髪のハリコシも減少することが明らかになりました。

図2.ハリコシの官能評価

【図2の説明】
アジア人の同一人毛髪を毛束に分け、処理時間を変えて(0分、15分、30分)ギ酸に浸漬した。処理後、それぞれの毛束を流水で充分にすすぎ、乾燥機で乾燥した。これらの毛束を、20代~40代の女性16名でハリコシについて官能評価を実施した。

図3.毛髪内の亜鉛含有率(%)

【図3の説明】
図2で用いた各毛束から毛髪を切出し、硝酸を加え、マイクロ波試料前処理装置 ETHOS ONEを用いて毛髪を完全に溶解した。これを誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS: Agilent-7700x)を用いて亜鉛量を測定した。測定時間0分の毛髪に含まれる亜鉛量を100%として、ギ酸処理時間を変えて処理した毛髪内に含まれる亜鉛含有率を算出した。

2)亜鉛化合物の浸透と毛髪内の亜鉛の確認
加齢により減少するハリコシの低下は40代以降に緩やかに起こることから、サンスターはギ酸での浸漬時間の短い処理毛髪(15分間)を加齢モデル毛に設定しました。そして、加齢モデル毛に対し、亜鉛化合物による亜鉛の浸透を試みました。その結果、加齢モデル毛にグルコン酸亜鉛水溶液(図中、GluZn水と略)を1時間浸透させることで、加齢モデル毛で起きたハリコシの低下が、有意に向上することを確認しました。

図4.ハリコシの官能評価

【図4の説明】
アジア人の同一人毛髪を毛束に分け、ギ酸を用いて15分間処理し、加齢モデル毛を作成した。この加齢モデル毛の一束をグルコン酸亜鉛水溶液に1時間浸漬した後、乾燥機で乾燥し、毛束表面の亜鉛を洗浄して乾燥させた(GluZn水処理毛)。これらの毛束を、20代~50代の女性30名でハリコシについて官能評価を実施した。

サンスターは次に、毛髪内のどこに、どれくらいの量の亜鉛が浸透したかを確認するため、高エネルギー加速器研究機構の放射光科学研究施設「フォトンファクトリー」の協力のもと、蛍光X線分析を実施しました。その結果、官能評価でハリコシの向上がみられたグルコン酸亜鉛水溶液で処理した毛髪では、キューティクル層の内側に多く亜鉛が浸透していることを確認しました(図5)。

図5.髪の毛断面の亜鉛の分布

【図5の説明】
図4で用いた加齢モデル毛とGluZn水処理毛、および同一人の未処理毛をそれぞれ樹脂に包埋した後、毛髪断面の切片を作成した。この毛髪断面に放射光を照射し、蛍光X線分析にて毛髪断面の亜鉛の分布を測定した。

さらに、後から毛髪に浸透させた亜鉛が毛髪内でどのような構造になっているのかを確認するため、フォトンファクトリーのX線吸収微細構造解析を実施しました。その結果、浸透させた亜鉛は、もともと毛髪内で存在していた亜鉛と同じ構造となって毛髪内のアミノ酸等と結合していると考えられたことから、この構造が毛髪のハリコシに関与していることを見出しました。

3)イオン化による浸透促進技術
サンスターは最後に、短時間ではキューティクル層の内側に浸透しにくい亜鉛の浸透を促進させる技術の開発に取り組みました。そして、亜鉛の浸透を促進する方法としてイオンに着目し、亜鉛を含む薬剤にイオンを付加することで、毛髪のキューティクル層の内側への亜鉛の浸透が促進され、短時間の処理で有意にハリコシ改善効果を実感できることを確認いたしました(図6)。

図6.ハリコシの官能評価

【図6の説明】
加齢モデル毛を充分に濡らしてタオルドライした後、亜鉛を含む薬剤(亜鉛薬剤)をイオン付き噴霧装置にセットして塗布し、直後に毛束を乾燥機で乾燥した。その後、処理した毛束をイオン交換水ですすいで毛束表面の亜鉛を洗浄して乾燥させた。同様に、イオン付加ユニットを除いた同型の噴霧装置を用いて、加齢モデル毛に亜鉛薬剤を塗布し、同様に処理した。これらの毛束を20代~50代の女性30名でハリコシについて官能評価を実施した。

これらの研究成果は、2014年10月にパリで開催された国際化粧品技術者会会議「IFSCC 2014 Congress」(IFSCC= The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists)にてポスター発表をいたしました。また、毛髪の物性の解析方法等の基礎研究成果は繊維機械学会誌(Vol.61, No.4, 2015)に掲載された他、亜鉛が毛髪内で形成する局所構造の解析の詳細については、フォトンファクトリーのホームページ内「Photon Factory Activity Report 2015」で掲載されています。
今後、これらの研究成果を活かして、いつまでも若々しく、強い毛髪を保つヘアケア製品の開発を進めてまいります。そして、髪の健康を考え、健康な髪が持つ本来の強さを追求してまいります。

※1 ANTI-AGING MEDICINE(日本抗加齢医学会雑誌) 4(1),38-42,2007
※2 繊維製品消費科学 55(10),50-55,2014

椙山女学園大学 教授 上甲恭平 氏について

東京工業大学 博士(工学)、大阪府立産業技術総合研究所の産業技術部 繊維加工グループリーダー、オーストラリア国立科学・工業技術研究機関「羊毛技術研究所」博士研究員、京都女子大学家政学研究科生活福祉教授を経て現在、椙山女学園大学生活科学部生活環境デザイン学科教授。
研究分野は天然繊維の機能加工および染色加工に関する研究。
主な著書は「羊毛の構造と物性(株式会社 繊維社)」、「最新の毛髪科学(株式会社 フレグランスジャーナル社)」など。
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