私たちの口には、次のようなさまざまな機能があります。
<口の機能>
歯や口は、さまざまなはたらきを持つ大切な運動器官でもあり感覚器官でもあります。お口を刺激し、運動を促すことは、栄養を取り込むだけでなく、カラダや脳の発達にも重要な役割を担っています。
生まれてすぐの赤ちゃんは、固形の食べ物は口にせず、母乳やミルクを栄養源にして成長します。
お口の中では、食べ物を噛むための準備がはじまっていて、唇やあごはあまり動かしませんが、舌を活発に動かしながらミルクを飲みます。おっぱいや哺乳ビンに吸いつく吸啜(きゅうてつ)という原始的な反射行動は、成長するにつれて弱まり、生後5~7ヶ月頃になると消失します。
授乳は、お母さんと赤ちゃんにとって重要なスキンシップです。できるだけ静かな環境で、やさしく声をかけながらゆっくりと飲ませてあげると、赤ちゃんに心の安定がもたらされ、食欲も育まれます。同時に、抱っこして顔やお口のまわり、お口の中をやさしく触ってあげる習慣も作っておくと、歯が生えた後の歯みがきの準備にもなります。
赤ちゃんの触覚は生まれた時から発達していて、中でも唇やお口はもっとも敏感。何でも口を使って確かめようとします。最近の研究では、生後60日の赤ちゃんの唇は、手足に比べて脳の反応が強く出るという報告もあり、口唇反射や吸啜反応との関係があると考えられます。
乳児期から3歳くらいまでの指しゃぶりや玩具しゃぶりは自然な行動で、敏感な口や指を刺激させることは、感覚機能や運動機能などの発達にも役立ちます。
赤ちゃんの感覚についてはさまざまな研究が進んでいますが、赤ちゃんの脳が日々発達しているこの時期に、赤ちゃんがいやがらない範囲で、スキンシップなどでいろいろなものに触れる経験も必要だと考えられています。
吸啜反射が弱まって舌の活発な動きもおさまったら、離乳期に入る目安です。個人差はありますが、下の前歯(乳切歯)が生えてくるのも、この頃です。唇で食べ物を取り込むことや、口を閉じて飲み込むことを覚え、スプーンを使って食べられるようになります。
私たちの五感の中で、味覚、聴覚、触覚などは、生まれた時から高い機能性を持っています。視覚の発達は遅く、生後5~8ヶ月頃に完成し、立体視による距離感の判断、色彩の認識、運動との連動などもできるようになります。視覚が完成すると、赤ちゃんは五感を使ってものを食べるようになるというわけです。
そして、上下の前歯である乳切歯が生え揃う生後8~9ヶ月頃には、唇と舌を別々に動かして、舌で食べ物を押しつぶしたり食べ物を運んだりできるようになります。
やがて奥の歯ぐきがふくらむと、歯ぐきを使って噛みつぶせるようになるので、これまでよりかための離乳食を食べられるようになります。
乳歯が生え始めたら、赤ちゃんのむし歯予防にも気をつけましょう。最初のうちは歯をガーゼや綿棒でぬぐう程度でかまいません。前歯がしっかり生え揃う頃には、ハブラシの感触に少しずつ慣れてもらいながら歯みがきの習慣を身につけましょう。
ジュースやイオン飲料を飲む時は、哺乳ビンに入れず、飲み物が歯に触れる時間をできるだけ短くしてください。哺乳ビンにそのような糖分を含む酸性の飲み物を入れて飲ませながら寝てしまうと、唾液の分泌が少なくなる睡眠時に、赤ちゃんの口の中に飲み物がとどまってしまい、むし歯ができやすくなります。
大人になっても健康な歯を維持するためには、乳幼児期からの習慣作りが大切です。「甘いものをほしがったら必ず食べさせる」が当たり前になると、規則正しい食生活を作れません。食事と間食の時間を決める、間食の回数を決めるなど、食事のリズムを整えるよう心がけてください。夜寝る前には歯をみがく、食後の歯みがきができない時はうがいをするという習慣も、家族で一緒に生活の中に織り込みましょう。
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