コラム
2020/11/04

愛犬のお口の中のケアとトラブル。犬の歯医者さんが解説します

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11月8日はいい歯の日。自分や家族はもちろん、愛犬の歯のことも考えてみませんか?犬が抱えるお口の中の問題、普段のケア、動物歯科医の利用法などを、歯科診療をしている獣医さんに聞きました。

プロフィール

 
石田陽子(いしだ ようこ)
石田ようこ犬と猫の歯科クリニック院長。獣医師。日本小動物歯科研究会、比較歯科学研究会、日本獣医行動学研究会所属。犬の専門誌にて記事監修を行っている。

犬のお口の中を知るクイズ4問

まずは、犬の歯とお口の中についてのクイズです。どれくらい知っているかチェックしてみましょう。人と同じ?人と違う?正解は写真の後に。

Q1 大型犬、中型犬、小型犬、歯の本数は?
1:変わらない 2:違う

 

Q2 犬のお口の中のトラブル。多いのはどちら?
1:むし歯 2:歯周病

 

Q3 犬の歯みがき、正しいのはどちら?
1:ガーゼなどで拭く 2:ハブラシでみがく

 

Q4 犬の歯みがき、ペーストは使っていいの?
1:使っていい 2:使ってはいけない


大型犬と小型犬、体格も性格も違うけれど、さて、歯の数は?

2歳の犬の80%が〇〇に悩んでいる?

それでは正解です。

Q1 1:変わらない

Q2 2:歯周病

Q3 2:ハブラシでみがく

Q4 1:使っていい

それぞれについて解説していきましょう。

Q1生まれたての子犬には、通常28本の乳歯があり、成犬になると通常42本になりますが、犬のサイズや犬種での本数の違いはありません。

その分、歯のサイズや密度が違ってきます。トイプードル、ミニチュアダックスフンド、ヨークシャーテリアやミニチュアシュナウザーといった犬種は密度が高く、逆に間隔が空いているのはラブラドールレトリバーなどの大型犬です。これはお手入れにも関係してきます。

Q2実は犬はあまりむし歯にはなりません。石田先生のクリニックでも「むし歯で犬が来るのは年に数回」とのこと。理由は犬のお口の中はアルカリ性だから。これはむし歯菌が繁殖しづらく、逆に歯周病菌が繁殖しやすい環境なのです。なんと「2歳を迎えた犬の80パーセントは歯周炎があるんです」と石田先生。

人間のお口の中は弱酸性で逆の環境です。そして人間は歯垢が歯石に代わるまでに20日を要するといわれますが、犬はわずか3~5日。それほど人間と犬とは違います。

そういう理由で、避けたい行為のひとつとして先生が指摘するのが「人間と犬が口と口でぺろぺろすること」。

「お互いの歯周病菌が行き来してしまうんです。愛情表現はほっぺをぺろっとしてもらうくらいにしておきましょう」


(左)歯周病でない犬のお口の中(右)歯周病になってしまった犬のお口の中

Q3はハブラシを使うというのが正解です。ガーゼなどは逆にリスクを高めてしまうのだそうです。

「歯周病対策が一番の問題ですから、歯周ポケットから歯垢をとらなければいけない。やはり一番良いのはハブラシなんです。シートみがきでは届かないですし、逆に歯の表面から歯周ポケットに歯垢を移行させてしまうことも。歯垢の中には生きた歯周病菌が多量にいます。歯の見た目はきれいにできるけれど、歯周病は悪化させてしまう可能性もあります」

でも、石田先生のクリニックでも「犬がハブラシを嫌がるからできないという方がとても多い」というのが現状。そこで必要なのが小さい頃からの歯みがきトレーニング。この際にQ4のペーストを使うことがうまくいくコツです。

「こうだから歯みがきが必要なんだよ、というのは言葉では伝わりません。犬が受け入れられるやり方として、おいしいペーストを使ってあげる。犬たちには歯みがきの時間が楽しいおやつの時間になるんです。そこで同時にスキンシップを取って、慣れさせてあげてくだい」


歯みがきのトレーニング風景

愛犬のために、治療よりもまず予防

愛犬のお口の中の環境のためには、良い習慣を心がけたいもの。

「フードはウェットよりもドライの方がお口には残りにくい。でも好みもあるでしょうから、ウェットでもちゃんとみがいてあげれば大丈夫です。それから人間と同じでお口の中の乾燥対策も重要。水をしっかり飲んでもらいましょう」

さて、愛犬のお口の中がよくない状態になっているかどうかの判断について、石田先生から驚きの指摘がありました。

「気づきのひとつは口臭。犬のお口のにおいはこんなもの、と思っているかもしれませんが、実は健康なお口の中はほとんどにおいがないんですよ。においがある時点ではもう歯周病が進んでしまっている証拠。放っておくと手術するしかなくなり愛犬が痛く辛い思いをすることも…。犬の歯周病は、飼い主さんが思う10倍厳しいと思ってください」

ちなみに歯石の量は歯周病の重症度の判断基準にはなりません。歯石は見た目は悪いもののその中にいた歯周病菌は既に死んでいます。しかし、歯石があるということはその前段階の歯垢がとどまり続けた証拠ですから、既に歯周病は進んでしまっているかもしれません。柔らかい歯垢のうちに生きた悪玉菌を取り除き続けることがとても大切。そのために日々の歯みがきを心がけましょう。

その際に「うまく動物歯科医を使っていただきたいんです」と石田先生。

「人間と同じで、痛くなってから治療するのではなくではなく予防が大切。できれば愛犬が家にやってきたらすぐに受診してください。歯みがきの仕方なども相談してください。お近くに動物歯科医がいらっしゃらなくても、動物病院でお口の中を意識して見ていただくようにしてください。私たちも、歯周病が悪化して麻酔を使った手術をする前に、健康でいてほしいと願っています」

犬はなかなか自分のお口の中の悪化や不快感を飼い主に伝えることができませんし、飼い主もそのサインを受け取れないでしょう。やはりキーワードは「早め早め」、そして「治療よりも日々の予防」です。

取材・記事 岩瀬大二

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