歯科医院には、見慣れない器具がたくさんあります。
「これは何に使うの?」「痛そう……」と、不安に感じた経験がある方も多いのではないでしょうか。
実は、それぞれの器具には、お口の状態を確認したり、治療したりするための、健康を守るための役割があります。器具の名前や使い方を知っていれば、治療中も「何をしているのか」がわかり、不安の軽減につながるかもしれません。
今回は、サンスター財団附属千里歯科診療所 所長・鈴木秀典先生に、歯科医院でよく使われる器具について、2回にわたって詳しく教えていただきます。
- 監修/鈴木秀典(すずき ひでのり)
- 一般財団法人サンスター財団附属千里歯科診療所 所長
1994年 岡山大学歯学部卒業 岡山大学歯学部インプラント再生学分野入局
1999年 一般財団法人サンスター財団入社 附属千里歯科診療所勤務
2004年 同診療所 副所長
2015年 同診療所 所長
〈所属〉
日本補綴歯科学会(専門医指導医)/日本臨床歯周病学会/日本口腔インプラント学会/日本歯科審美学会/日本口腔リハビリテーション学会/スタディグループClubGP理事/ブレイクスルー大阪(主宰)
こちらの前編では「診察と検査で使う器具」と「むし歯治療で使う器具」について、後編では「麻酔で使う器具」と「予防とクリーニングに使う器具」、さらに「歯科医院で気になる疑問」についてご紹介します!

まずは知りたい! 診察や検査でよく見る器具
健診の時などに使用する歯ぐきの検査のときに「チクチク」する器具は何ですか?
「ポケットプローブ」といいます。歯ぐきの健康状態を調べるための器具で、歯と歯ぐきの隙間(歯周ポケット)の深さや、挿入したときの出血の有無などを確認します。
細い器具の先端に目盛りが付いています。歯周ポケットの深さは、健康な歯ぐきは3mm程度ですが、4mm以上の場合は歯周病の進行を疑います。
また、挿入時に出血がある部位は、炎症がある重要なサインです。歯周ポケットが4mm以上で出血があるところは、歯周病の進行リスクがある部位と考えられます。また、3mm以下でも出血があるところは、要注意ポイントと言えます。

歯ぐきの健康状態を調べる「ポケットプローブ」。
「カチカチ噛んでください」と 言われて、紙のようなものを噛むときは、何を調べていますか?
上下の咬み合わせを調べています。主に詰めものや被せものを歯に装着する際に、咬み合わせの強さや位置のチェックに使用するもので、「咬合紙(こうごうし)」といいます。
赤色が一般的ですが、青色や緑色もあり、用途によって紙の厚みもさまざまです。標準的な咬合紙は厚み30~40µm(マイクロメートル)で、髪の毛の太さの約半分ほど。人の歯の感覚は驚くほど敏感です。何度も「カチカチ噛んでください」と言われるのは、1mmの数十分の1レベルの微調整をしているためです。
ちなみに歯科医師としては、「噛んでください」と言われたときは、フワッと噛まずにしっかり全力で噛んでもらいたいです!

「咬合紙」を噛んで、歯に色が着いた状態。
「キーン」「ゴトゴト」「シュッ」……むし歯治療で使う器具
歯を削る「エアータービン」という切削器材です。
歯はとても硬いため、切削用のダイアモンドポイントを圧縮空気で高速回転させて削ります。
その回転数は、1分間に約30万〜50万回転。この超高速回転によって「キーン」という音がするのです。

歯を削る「エアタービン」。
むし歯治療で「ゴトゴト」と音がする器具は何ですか?
モーターで回転させる切削器材です。
エアータービンよりは回転数が遅く、用途に応じて回転数を調整できるため、「キーン」という音ではなく「ゴトゴト」という音や振動を感じることがあります。
「エアータービン」が歯の外形を大きく削るときなどに使うのに対して、こちらは歯の内部のむし歯や神経の管を丁寧に低速で削るときなどに使います。

低速で歯を削る切削器材。
治療中に「シュッ」と風や水が出るのは何をしていますか?
「シュッ」と風や水を出す器材を「スリーウェイシリンジ(Three-way syringe)」といいます。
右側のボタンを押すと風(エアー)が、左側のボタンを押すと水が出ます。「それならツーウェイでは?」と思われるでしょうが、さらに両方のボタンを同時に押すことで風+水の混合噴霧ができます。
エアーは歯の状態を良く観察するときや、詰め物などを接着するための前準備として、歯を乾燥させるために使用します。水は、歯の周囲の血液や唾液を洗浄するときに使用します。風と水を同時に出す混合噴霧は、歯の削りかすなどさらに取り除きにくいものを洗浄するときなどに用います。

ボタンを押して風、水、風+水を出す「スリーウェイシリンジ」。
吸う・固める・支える 治療をスムーズにするさまざまな器具
いつもお口の中の水や唾液を吸ってくれる管のようなものは何ですか?
「口腔内バキューム」といいます。
主に歯科助手や歯科衛生士が操作し、水や唾液を吸い込むのはもちろん、頬の内側や舌が傷つかないように切削器具から遠ざけて、歯科医師が作業しやすいように治療スペースを確保します。
たまにほっぺや舌に「ビュッ」と吸いついてしまうことがありますが、口腔内に水や唾液がたまる不快感をなくし、治療をスムーズに進めるために欠かせない器具ならではの出来事です。
「LED光照射器」です。詰め物や接着剤を、光を当てて硬化させるために使います。
詰め物や接着剤には、A液とB液を混ぜるような化学反応で硬化が始まるもの(化学重合)と、光を当てて硬化させるもの(光重合)があります。
最近のレジン系充填剤や接着剤は、光重合が主流です。以前はハロゲンランプを使用していましたが、最近は発熱量が少ない青色LEDが主流になっています。
「どこかで見たことがある」と思った方もいるかもしれません。実は、ネイルサロンなどで使われるライトと同じです。

「LED光照射器」(左)で光を当てる(右)。
治療中、口を開けておくために入れる器具は何ですか?
「開口器」といいます。治療中に口が閉じないようにするための器具です。
歯科治療のなかには、治療途中で歯の内部に唾液や水が入ると、治療の成功率が下がるものがあります。その場合、治療中はお口を開けた状態にしておく必要があります。
とはいえ、ずっと自分の力で口を開けていると、だんだん疲れてしまいます。そこで、口が閉じないように開口器を使ってサポートします。

「開口器」(左)で、お口が閉じないようにサポートする(右)。
器具の役割を知って、歯科医院を身近に感じよう
いかがでしたか?
前編では、「診察と検査で使う器具」と「むし歯治療で使う器具」について紹介しました。「あの器具は、こんな役割があったんだ」と知ることで、歯科医院での治療が少し身近に感じられたらうれしいです。
後編では「麻酔で使う器具」と「予防とクリーニングに使う器具」、さらに「歯科医院で気になる疑問」についてご紹介しますので、ぜひあわせてご覧ください!(11月1日公開予定)
