食欲の秋。栗やさつまいも、ぶどう、柿など甘みのあるおいしい食べ物が増える季節です。
「甘いもの=むし歯」というイメージがありますが、実はいろいろな食品に糖質が含まれています。糖質とは、私たちの体を動かすエネルギー源になる栄養素のひとつです。砂糖などの「糖」だけでなく、ごはんやパン、果物などにも含まれています。

そして、お口の中の細菌は糖を利用して酸をつくり、その酸がむし歯に関わります。
糖とお口の細菌はどのように関係しているのでしょうか? おいしく食べながらお口の健康を守る方法を、歯科衛生士に教えてもらいました!
監修者プロフィール
- 平塚 江玲奈
- 歯科衛生士。一般財団法人サンスター財団に所属し、保育園、小学校、中学校における歯科保健指導や、成人を対象としたセミナー活動に従事し、オーラルケアの重要性を啓発している。
「糖」は、お口の菌にどのように利用される?
糖は、お口の中でどのような影響を及ぼしているのでしょうか。
糖は、ミュータンス菌など、むし歯に関わる細菌のエネルギー源となり、プラーク(歯垢)の形成や、細菌による酸の産生に関係しています。
お口の中には、どのような菌が住んでいますか。
お口の中には、むし歯や歯周病に関わる菌をはじめ、さまざまな細菌が住んでいます。
普段は多くの細菌がバランスを保ちながら存在していますが、食生活やお口の清掃状態などによって細菌のバランスが崩れると、むし歯や歯周病などのお口のトラブルにつながることがあります。
糖を摂ると、なぜむし歯になりやすくなるのでしょうか。
お口の中に糖が入ると、プラークの中にいる細菌が糖を利用して酸をつくります。この酸によって、歯の表面からカルシウムなどのミネラルが溶け出す「脱灰」が起こります。 一方で、通常は唾液の働きによって酸が中和され、溶け出したカルシウムやリンが歯に戻る「再石灰化」が起こります。 このように、私たちのお口の中では「脱灰」と「再石灰化」が繰り返されています。しかし、糖を含む飲食物を頻繁に摂ると、脱灰している時間が長くなり、再石灰化が追いつかなくなるため、むし歯になりやすくなります。
「糖」の種類によって、むし歯への影響は違う?
糖は、お菓子やジュースなどの甘いものだけに含まれているのでしょうか?
糖は、お菓子やジュースなどの甘いものだけに含まれているわけではありません。
例えば、果物や乳製品など、私たちが日常的に口にするさまざまな食品にも糖が含まれています。また、ごはんやパン、麺類などに多く含まれるでんぷんも糖質の一種で、お口の中で分解されると糖になります。
そのため、「甘いものだけを控えれば大丈夫」と考えるのではなく、さまざまな飲食物に糖質が含まれていることを知っておくことが大切です。
糖にもいろいろな種類があるのですね。
砂糖、果糖、ブドウ糖など、糖の種類によってむし歯への影響は変わりますか?
砂糖の主成分であるショ糖は、むし歯との関わりが特に深い糖とされています。
もちろん、ショ糖だけでなく、果糖やブドウ糖などもプラークの中の細菌に利用され、酸がつくられるため、むし歯の原因になります。
なかでもショ糖は、酸の産生に利用されるだけでなく、ミュータンス菌が歯に付着しやすくなる粘着性のある物質をつくる際にも利用されるので注意が必要です。
ただし、むし歯のなりやすさは糖の種類だけで決まるものではありません。摂取する量や頻度、歯みがきの状態、唾液の働きなど、さまざまな要因が関係しています。
キシリトールやエリスリトールなどの糖アルコールは、むし歯になりにくいといわれますが、その理由を教えてください。
キシリトールやエリスリトールなどの糖アルコールは、お口の中の細菌に利用されにくく、歯を溶かすほどの酸がつくられにくいため、むし歯の原因になりにくい甘味料です。なかでもキシリトールは、お口の中の細菌に利用されず、酸をつくらないほか、ミュータンス菌の働きを抑えるという特徴があります。
また、キシリトール入りのガムなどを噛むことで唾液の分泌が促され、お口の中の酸の中和や歯の再石灰化を助けることも、むし歯になりにくい理由のひとつです。
甘味料を選ぶ際に、意識するとよいことはありますか?
食品を選ぶ際には、キシリトールやエリスリトールなど、むし歯の原因になりにくい甘味料を使用した食品を選ぶのもひとつのポイントです。
ただし、商品によっては砂糖など他の糖類も含まれているため、食品表示を確認して選ぶとよいでしょう。
むし歯を予防する食べ方・飲み方とは?
むし歯予防では、「何を食べるか」だけでなく、「いつ・どのくらいの頻度で食べるか」も重要なのでしょうか?
はい。むし歯予防では、何を食べるかだけでなく、食べる時間や回数にも気をつけることが大切です。
先ほどご紹介しましたが、糖を含む飲食物を摂ると、お口の中では脱灰と再石灰化が起こります。
そのため、間食や甘い飲み物などを頻繁に摂ると、再石灰化が追いつかず、むし歯のリスクが高まります。したがって、だらだら食べたり飲んだりすることを避け、間食は時間を決めるなど、飲食の回数を意識することが大切です。
スポーツドリンク、ジュース、缶コーヒーなどの飲み物にも注意が必要でしょうか?
はい、注意が必要です。スポーツドリンクやジュース、砂糖入りの缶コーヒーなどの糖が含まれている飲み物を頻繁に飲むと、むし歯のリスクが高まります。
特に注意したいのが、時間をかけて少しずつ飲む「だらだら飲み」です。飲むたびにお口の中が酸性に傾くため、長時間にわたって飲み続けると、歯が溶けやすくなります。
水分補給には、水やお茶など糖を含まない飲み物を選ぶことも大切です。
間食をする場合、気をつけたいポイントを教えてください。
間食をする場合も、何を食べるかだけでなく、時間と回数を決めて、だらだら食べないことが大切です。
また、甘いものを選ぶ際には、先ほどご紹介したキシリトールなど、むし歯の原因になりにくい甘味料を使用した食品を取り入れる方法もあります。
食べた後は水やお茶を飲んだり、お口をすすいだりするのも、お口の中に残った糖などを洗い流すのに役立ちます。

「食べ方」と「食べた後のケア」で、お口の健康を守る
今日から始められる、おすすめのオーラルケアを教えてください。
まずは、毎日の歯みがきを丁寧に行うことから始めましょう。
「歯の再石灰化を促進する」「歯質を強くする」「細菌の働きを抑える」という3つの働きをもつフッ素入りハミガキを使用し、歯と歯ぐきの境目や奥歯の噛み合わせの溝など、プラークが残りやすい場所を意識してみがくことが大切です。特に、就寝中は唾液の分泌量が減り、細菌が増えやすくなるため、寝る前の歯みがきは丁寧に行いましょう。
また、ハブラシだけでは歯と歯の間のプラークを十分に落としきれないため、デンタルフロスや歯間ブラシなどの歯間清掃用具を取り入れることも大切です。さらに、殺菌成分などが配合された液体ハミガキや洗口液を取り入れるのもおすすめです。
毎日のセルフケアと定期的な歯科受診でお口の環境を整え、細菌と上手に付き合っていくことが、お口の健康を守ることにつながります。
やはり、毎日の歯みがきが基本なのですね。
「糖」と上手に付き合いながら、お口の健康を守るために、一番大切なことは何でしょうか。
糖を完全に避けるのではなく、何を選び、いつ、どのように摂るかを意識して、上手に付き合っていくことが大切です。 おいしい食べ物は私たちの心身を満たし、生活に豊かさをもたらしてくれますよね。「食べ方」と「食べた後のケア(オーラルケア)」を意識して、秋の味覚を満喫していただきたいと思います。
「甘いもの=むし歯」と考えて、好きなものをすべて我慢する必要はありません。大切なのは、糖とむし歯の関係を知り、食べる時間や回数、食べた後のケアを少し意識することです。
正しい知識を身につけて、旬の味覚を楽しみながら、お口の健康も守っていきましょう。
