みなさんは、お口のケアに欠かせない3つのステップ「BIR」をご存知ですか?「BIR」とは、B:ブラッシング(歯みがき)と、I:インターデンタルクリーニング(歯間清掃)、R:リンシング(洗口)の頭文字をとったものです。実は、ブラッシングだけではプラーク(歯垢)の除去率は約65%にとどまります。しかし、デンタルフロスや歯間ブラシを併用することで、除去率は80~85%近くまでアップします(※)。
サンスターでは、「BIR」の普及のために、2022年から歯科衛生士を対象に「BIRマイスター」認定制度をスタートしました。現在では全国47都道府県すべてに「BIRマイスター」が在籍しています。
今回は、そのひとりである齋藤麗華さんに、「BIR」の大切さや、習慣化のコツを伺いました。
※引用元:日歯保存誌48(2),272-277,2005
プロフィール
- 齋藤麗華(さいとう れいか)さん
- 歯科衛生士。一般社団法人日本スポーツ歯科医学会所属。一般歯科の診療所で勤務し、主に歯周病治療にあたる。2023年にBIRマイスター資格を取得。
「BIR」の重要性を知ることが、習慣化への第一歩
齋藤さんは、いつ頃「BIR」を習慣にされましたか。
今から十数年前に、歯科衛生士を目指して歯科衛生士養成校に入学した頃です。当時は今ほど歯間ケアが一般的ではなく、私自身もあまり知識をもっていませんでした。
そんな時、学校の先生で、日本とアメリカの両方で歯科衛生士の免許を取得されている方が、「なぜ皆さんはランチの後に歯間ケアをしないの?アメリカでは小さなこどもでも歯間ケアをしますし、歯間ケアをしていないことは恥ずかしいことだと思っていますよ 」という話をされたんです。その言葉を聞いて、初めて歯間ケアの重要性に気づかされました。
ブラッシング以外のケアの大切さに気付いて、すぐに習慣化できたのですか?
歯科衛生士養成校で学ぶ中で、自分のむし歯の多さを自覚したことが、歯間ケアを習慣化するきっかけになりました。歯間が狭かったこともあり、当時はフロスを中心に歯間ケアを行っていました。
現在は、朝と夜はブラッシングに加えてフロスや歯間ブラシでの歯間清掃、そして洗口は昼と夜に行っています。昼は殺菌剤入りの洗口液を、夜は娘と一緒にフッ化物の洗口液を使っています。
齋藤さんは1日2回、「BIR」のオーラルケアを行っているのですね。
はい。でも、これから習慣化される方は、まずは1日1回、夜間のブラッシング時だけでいいと思います。それでもハードルが高い場合は、2日に1回でもいいのです。できるところからはじめていたただければと思います。ご自身のお口にあった実施方法は歯科医院で歯科衛生士の方にご相談してみてくださいね。
患者さんへの指導は、まずはコミュニケーションから
歯科医院では、患者さんにどのように「BIR」の習慣化についてご説明されていますか。
まずは患者さんの口腔内をチェックし、プラークコントロールの状況を見ます。
歯科通院歴があり、プラークコントロールができている方には「普段はどういうケアをされていますか?」と伺ったうえで、その方に合った歯間ケア・洗口のアイテムや実施方法 をお伝えします。一方、プラーク(歯垢)が石灰化して歯石になってしまっているような場合は、歯間ケアのご説明の前に、まずはブラッシングの方法をお伝えさせていただきます。その方のプラークコントロールの状況や、オーラルケアへのモチベーション等もふまえて、初回からあれこれ指導するのではなく、まずは聞き取る、歯周病という病気に感染しているという事をお伝えするなど、コミュニケーションを取ることを大切にしながら、最適なケア方法をお伝えしています。

患者さんのお口の状態やこれまでのケアを知ることを大切にされているのですね。
はい。歯科医院に来るだけで緊張する方や、治療器具の音が苦手な方もいらっしゃいます。まずはコミュニケーションをとって、話しやすい雰囲気をつくることが、その後の信頼関係につながると考えています。傾聴と来院してくださった事に感謝する気持ちを大切にして、患者さんがオーラルケアのモチベーションを上げていただけるようなコミュニケーションを意識しています。
「BIR」の習慣がない患者さんの習慣化のために、工夫していることはありますか。
プラークというものが歯周病菌の塊で、このプラークを除去することで歯周病から身体を守れるという事をお話しします。そのうえで、効果的な歯間ブラシの動かし方など、ケアのポイントをお伝えします。
洗口も同じように 、「寝起きの口臭はどうですか?」「口腔内のネバつきはどうですか?」と聞いて、効果を確認します。
さらに「毎日でなくても大丈夫、2日に1回からでいいですよ」等と、その方の負担にならない頻度で実施いただくことをまずはお伝えしています。
一度習慣化できても、時間が経つとやらなくなってしまう方もいらっしゃいます。
そのような場合はどのように指導されていますか。
改めて歯周疾患のメカニズムをお伝えするなどして、ご自身で進行を抑制できる病気だという事や習慣化の必要性を再認識していただきます。理解が深まることで「もう一度頑張ります」と前向きな気持ちになられる方が多いですね。
モチベーションがあがってくると、 患者さんの中には自主的に次回の予約を早めに入れられる方もいます。「心配なので、3ヶ月後に定期健診をお願いできますか?」とおっしゃり、その通院を目標に日々のケアを習慣化されるケースもあります。
前向きな姿勢を評価し、セルフケアを促す
印象に残っている患者さんのエピソードを教えてください。
予約をせずに突然 来院した40代の男性は、むし歯はないものの歯石がびっしりとついており、重度の歯周病でした。担当ドクターとも相談し、無理のない通院ペースを提案し、歯周病治療に取り組みました。今年で3年目になりますが、抜歯した歯は1本もありません。BIRも習慣化し、良い状態を維持されています。
患者さんのBIR習慣化にむけて工夫はございましたか?
この方には、BIRマイスターが所属する医院が申込をするともらえる「BIRセット」(ハブラシ、歯間ブラシ、洗口液のサンプル)をお渡ししました。「BIRセット」を使用いただいたことで効果を実感され、今では外出先でも洗口を習慣にされているそうです。まずは試してみることで、オーラルケアの重要性や効果を実感いただけるのだと思います。
外出先でも習慣化されているのは、素晴らしいですね!
習慣化に向けて努力されている患者さんには、どのように関わられていますか。
努力されているときは、必ず褒めるようにしています。たとえば、それまで歯間ブラシを使っていなかった方が週3回でも取り入れられるようになったとしたら、それは大きな一歩です。「洗口液を試してみたんです」とか「おすすめされたハミガキを買ってみました」といった前向きな行動も、すべて患者さん自身が踏み出した大切なステップ。そうした姿勢は必ず評価し、しっかりお伝えするようにしています。
ほめていただけると、よい一層モチベーションが上がりますね!
私の目標は、患者さん自身が健康行動を起こすことです。「二人三脚で取り組みましょう」とお伝えし、セルフケアを促しています。
全世代に欠かせない、お口の健康習慣「BIR」
最後に、改めて「BIR」の3ステップを解説してください。

歯の内側(舌の側)にプラーク(歯垢)が残っている方が多いので、内側へのハブラシの当て方を意識してください。特に、奥歯の内側は要注意です。

「インターデンタルクリーニング」というと、「クリーニング=きれいにする」という印象を受ける方もいるかもしれませんが、歯間清掃は歯周病予防の「ケア」として欠かせないステップです。「ケア」という意識で取り組んでいただければと思います。
フロスと歯間ブラシの使い分けなど、ケアに使うアイテムについては、歯科医院でお口の状態に合ったものを指導してもらってください。

リンシングは、お口のお悩みにあわせて商品を選択いただくと、歯周病・むし歯の予防や口臭予防に繋がります。また、お口を動かすことにより、口輪筋などお口まわりの筋肉を鍛える効果もあります。お子さんもブクブクうがいができるようになりましたら、早い時期から練習を始めていただくと良いでしょう。
BIRは、お子さんからご年配の方まで、すべての世代に必要なケアなのですね。
ぜひ皆さんも、毎日の習慣にしてください。BIRの習慣化を実践している方はどんなことを実践しているか、また実践していない方はやりたいと思ったケアをコメントしてください!
