コラム
2020/04/07

《守るための、縁の下のちからもち》第1回 ラグビー選手を支えるメディカルトレーナーという仕事

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お口の健康を保つことは、全身の健康にかかわる大きな問題です。人生100年時代といわれるこの時代には、身体の健康を保つことがいつまでもイキイキ過ごすために大切。そこで、みなさんの健康を守るためにベストを尽くす、「縁の下のちからもち」を、さまざまな分野からご紹介します。

プロフィール

 
髙野宏樹(たかの ひろき)
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス ヘッドメディカル
医療法人社団 紺整会 船橋整形外科クリニック アスレティックトレーニング部主任

2019年に開催されたラグビーワールドカップの熱狂から続くラグビー人気。国内最高峰のリーグ戦であるトップリーグでは、国内外の一流選手がしのぎを削り、素晴らしいプレーを見せてくれました。

しかし、なんといっても激しく肉体をぶつけ合うスポーツですから、選手たちは強靭な肉体作りやコンディション作りが必要で、さらに練習や試合での怪我への対応も必須です。

これを支えるのがメディカルトレーナーというお仕事。さて、どんな内容で、この仕事から見たラグビー選手のすごさや素顔はどんなものなのでしょうか。

昨シーズンのトップリーグで5位に躍進。スター選手も数多く所属する「NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス」のヘッドメディカル、髙野宏樹さんに、ファン歴40年、いつも試合を見て感動で泣いてしまうラグビーフリークのライター岩瀬が伺います。

ラグビー選手は医学の常識を超える!?

ラグビー選手の体は屈強、強靭。でもハードな戦いですからケガも多いのでしょうね。
右
彼らといると混乱しますよ。医学の常識を超えてきますから。(笑)
混乱?どういうことですか??
右
まずケガからの回復力。ある日本代表にも選ばれている選手なんですが、選手生命の危機ともいえる手術をして、回復に1年かかるはずなのに、半年で復帰できた。

メディカルトレーナーの立場とすれば、たくさんの研究を重ねて、積み重ねた資料もある。その立証した結果をもとに復帰までの期間や状態を想定しているのですが…彼らといったら…リハビリの強度もすごいですし、想定した常識を超えて回復していってしまう。(苦笑)
常識を超えてしまうと!トレーナーからしたらとんでもない人たちなんですね。
右
今までいろいろなスポーツに関わってきましたが、本当に彼らはすごいです。

マルチカルチャーの中での信頼関係

体が資本の仕事。こだわりもすごそうですから、メディカルトレーナーの立場としては大変でしょう。
右
例えば練習後のアイシング。こちらとしてはしてほしい。でも選手によって必要、不要の感覚が違います。トップレベルの選手ですからここまでくる間で成功したやり方があって、それは尊重したい。でも必要性は伝え続ける。そこはせめぎあいです。
どのようなやりとりの中で納得しあうのですか?
右
お互いプロ同士であるということです。彼らはラグビー選手としてのプロ、こちらはメディカルのプロ。彼らが私のことをプロと認めてくれるように日々の仕事に取り組む。そして実証、データをしっかり提示する。その上でお互いのマインドを理解しあう。

今季、南アフリカ代表の選手が加わりました。彼は「君のプロとしての考えをいってくれ。それを受け入れる」といってくれましたが、それに応えていかなければいけません。
高校、大学、他チームからの移籍に加えて、現在のトップリーグは海外から一流選手もやってくる。育ったカルチャー、マインドは大きく違うのでしょうね。
右
国でいえばニュージーランド、豪州、南アフリカ、トンガの選手がいて言語だけではなく考え方も違う。回復のスピードや筋肉量などフィジカル面でも違うんです。

彼らが安心してプレーできるように、肉体面、精神面ともにしっかりコミュニケーションをとりながらケアしています。私は幸い、今までのキャリアで英語が使えますので、それは役立っています。

世界のトップチームでの経験が生きる

英語を使う環境で仕事をされていたんですね。
右
きっかけは中学の時、サッカーをやっていて、ドイツの1FCケルンというチームに短期留学しました。
サッカー強国ドイツでも古くからの名門チームじゃないですか!
右
はい。でもそこで一番印象に残ったのが医療施設。すごいなと。もともとスポーツ選手と関わる仕事をしたいという思いもあったので、そこからこの仕事を目指し、高校卒業後はアメリカに留学しました。

インターンシップでアメリカンフットボールのピッツバーグ・スティーラーズ、アイスホッケーではNYアイランダースなどに関わることができました。それからニューヨーク州の大学で7年間、アスレティックトレーニングの仕事をしました。
アメリカのプロスポーツのトップ中のトップを経験された。そしていろいろなスポーツの選手の体を見てきたというのは、選手からの信頼にもつながりますね。

ラグビー選手の素顔は「大きな子供たち」

話は戻りまして、選手たちは回復力もすごければ痛みにも強いんですか。
右
我慢強いといいますか、黙っているタイプもいますよ。試合に出たいからです。怪我の具合によっては、僕からもコーチからもストップがかかりますから。子供が歯医者さんに行きたくないから痛いのを我慢していわないみたいな。(笑)
大きな子供だ。(笑)
そうなると普段から観察しておくことも必要ですね。
右
そうなんです。少しの変化を見逃さない。大丈夫だといってもいつもよりも足の動きがおかしいなど、注意深く見ています。
歯医者に行かないっていうお子さんひとりでも観察をするのは大変なのに。何人の選手を見なければいけないんですか?
右
50名です。もちろん私だけではなく、4人のスタッフで手分けしながらですが。だからミーティングは欠かせません。コーチ、メディカルトレーナー同士。共有するための時間はとても長いです。

最後に、ラグビーの試合で、選手のここを見て欲しい!というところを教えてください。
右
マニアックでもいいですか?
もちろんです!
右
胸鎖乳突筋という、首筋から鎖骨にかけて通っている筋があるんですが、そこにぐーっと力が入るところはたまりませんよ。ぜひ。
本当にマニアックでしたね。(笑)
取材後記このインタビュー後、トップリーグの試合を観戦。試合中に傷んだ選手たちに何度も、何度も駆け寄る髙野さんを見て、このインタビューを思い返しました。傷んだ選手は、ベテラン、外国人、若手、すでに試合開始から足にテーピングをしていた選手など様々。髙野さんの処置により再び戦線に気合を入れて帰っていく選手。海外や様々な肉体を見てきた経験、普段から選手たちのコンディションに気を配り、それぞれに合わせたコミュニケーションをしていたからこそ、試合中に適切な判断ができる。結果は勝利。その勝利の裏にメディカルトレーナーの不断の努力がありました。

シャイニングアークスの試合日程などの情報はこちらをチェック!
https://www.ntt.com/rugby/

取材・記事 岩瀬大二
撮影 石原敦志

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