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2020/08/31

骨髄抑制期の生活~がん治療中の方へ~

がん治療とお口のトラブルには密接な関係があります。口腔ケアと全身の健康に関する研究を続けてきたサンスターは、がん治療における口腔ケアの重要性に着目し、医療関係者や患者さんの意見をくみあげた、口腔ケアの研究開発や情報発信に取り組んでいます。 がんとたたかう方のお役に少しでも立てるよう、お口の悩みを軽減するための口腔ケア関連の情報を提供しております。

監修/佐伯香織(さえき かおり)
がん看護専門看護師。2003年東京都立駒込病院 血液内科 造血幹細胞移植病棟勤務。(~2009年)
2014年がん看護専門看護師資格取得。2015年国家公務員共済組合連合会 横浜栄共済病院勤務。

以前のコラムで、がんの治療が血液を造る骨髄という部位に影響することをお伝えしました。今回は、骨髄抑制期において、口腔ケアの視点から実際の生活で気をつけていただきたい内容をお伝えいたします。

がんの治療と骨髄抑制について

まずは、「骨髄抑制」とは何か改めてご説明いたします。骨髄は、私たちのカラダを流れる血液を作る部位です。
ウイルスや菌と闘う「白血球」、カラダの隅々に酸素を運ぶ役割の「赤血球」、出血を止める機能を持つ「血小板」、これらは造血幹細胞という“血液の種”から成長してそれぞれの役割を持つ成分に変化します。
しかし、抗がん剤や放射線治療をすることで、血液を作る「骨髄」の機能は少しずつ低下してしまいます。
その結果、“血液の種”が減ってしまうため、治療前と比較すると十分に機能できるほどの数が確保できなくなるのです。
このような副作用のことを「骨髄抑制」と呼びます。
さらに血液の成分は、それぞれ役割が異なるだけでなく、寿命も決まっています。(下記グラフ参照)

そのため、抗がん剤の投与後から血球が減少する時期や回復する時期もそれぞれ異なります。
白血球に関しては、抗がん剤投与後2~3日頃から減少して7~14日後が最も少ない時期となります。
14~21日後にかけて回復をしてくるので、十分に回復するまでの期間の生活が重要になってきます。

骨髄抑制期に起こる症状

次に、骨髄抑制時にはどのような症状が起こりやすくなるのかを紹介いたします。
主な症状としては、感染しやすくなる(白血球減少)、貧血になる(赤血球減少)、出血しやすくなる(血小板減少)の3つです。
感染しやすくなるというのは、がんの治療をしていると抗がん剤や放射線の影響で、菌やウイルスからカラダを守る機能が低下するためです。また、抗がん剤の影響で口内炎などの症状があると、口腔粘膜のバリアも弱っています。そうすると、口内炎の部分が容易に二次感染をきたして炎症も痛みも悪化してしまうのです。
貧血になると疲れやすくなり、坂道を歩くと呼吸が苦しくなることもあります。また、出血をしやすい状態になると、いつもの口腔ケアでみがいている歯みがきの方法でも出血をしてしまうことがあります。しかし、血液機能が万全ではなくても、注意をして生活をすることで普段の生活を補えることができます。

日常生活での注意点

では、どのようなことに気をつけながら生活したらいいのでしょうか。
私たちの生活において、菌やウイルスをすべて排除することはできず、むしろ共存をして助けあっています。菌は食べ物を発酵させ、ウイルスは体内に侵入することで私たちのカラダがその情報を分析し、免疫を獲得します。
特に、造血幹細胞移植(通常の化学療法では治すことが難しい血液がんや免疫不全症に対して完治させることを目的として行う治療)をしている方には、日常生活について問われると、「自分が赤ちゃんになったことを想像して、身の回りやカラダを清潔にお手入れしてあげてください。」とお伝えしていました。

お口に関しては、もちろん生まれたての赤ちゃんに歯は生えていませんが、みなさんの歯に付着しているプラーク(歯垢)1gには500~700種類の細菌が約1000億個も存在するといわれています。骨髄抑制時は白血球減少によって口腔内に存在する細菌からの影響を受けやすくなっていますので、まずは治療前に歯科を受診して、カラダの抵抗力が落ちる前にお口の中を専門的に清掃し、プラークを除去しましょう。

日常的なケアとしては、食後と就寝前の1日に3~4回の口腔ケアが推奨されています。歯みがきの方法としては、ハブラシでゴシゴシと強くこする必要はないため、鉛筆を持つようにハブラシを軽く持ち、毛先を使ってやさしくみがきます。特に骨髄抑制時にはハブラシは軟毛にして歯肉(歯ぐき)を傷つけず、出血しないようにみがいて下さい。さらに、歯間ブラシやデンタルフロス(糸ようじ)は一時的に控えるなど出血に注意をして下さい。プラークだけではなく舌の上も細菌の温床になるため、舌ブラシやスポンジブラシ、粘膜ブラシで舌苔を除去します。その時も強くこする必要はないため、やさしく奥から手前に向かって一方向で行います。

骨髄抑制時だからといって過敏になる必要はありません。普段の生活をよりやさしく、清潔に気を付けていくことで乗り越えることができるので、ゆったりと過ごして下さい。

<引用・参考文献>
国立がん研究センター看護部:国立がん研究センターに学ぶ がん薬物療法スキルアップ,南江堂,2018
鈴木志津枝,小松浩子監訳:がん看護PEPリソース,医学書院,2013
佐藤禮子:がん化学療法・バイオセラピー看護実践ガイドライン,医学書院,2009
泉二登志子他:成人看護学4 血液・造血器,メヂカルフレンド社,2018
上野尚雄他:がん患者の口腔マネージメントテキスト,文光堂,2016
夏目長門,池上由美子:治療を支えるがん患者の口腔ケア,医学書院,2017
クラブサンスター:https://www.club-sunstar.jp(最終アクセス2020/1/18)

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