今回は、糖尿病に関する、あまり選ばれたくないランキングをお届けします。
厚生労働省が発表した「2015年人口動態統計月報年計」によると、10万人あたりの糖尿病による死亡者数は、全国平均が10.6人のところ、青森県は18.2人で2年連続で全国ワースト1位という結果になりました。ワースト2位は秋田県の16.3人、3位は香川県の16.1人でした。
一方、全国ベスト1位は神奈川県の7.2人!全国平均を大きく下回り、ワースト1位の青森県の約40%ですね。ベスト2位は愛知県の7.7人、3位は滋賀県の8.1人でした。
平均年齢が違うということを考慮しても、なぜ青森県と神奈川県ではこんなに差があるのでしょうか。
青森県がん・生活習慣病対策課によると、青森県内の糖尿病患者は糖尿病が重症化してから糖尿病の改善に取り組む人が多く、3大合併症(網膜症、腎症、神経障害)を発症している患者の割合が全国と比べて高いようです。
また、保険医団体連合会の調査によると、「医療費が支払えない」といった経済的理由で糖尿病や高血圧の治療を中断する患者がいる医療機関が、県内で約40%以上、「受診回数を減らしたいと言われた」「薬が切れているはずなのに受診しない」といった事例も70%を超えているといいます。
以前「『医師に聞きたいけれど、なかなか聞けない…』こと、ありますか?」というトピックでも話題になりましたが、糖尿病治療を続けていくうえで医療費、薬代の負担は深刻な問題だと思います。
青森県保険医協会は「医療費負担を下げる糖尿病の治療を考えなければ、死亡率を下げるのは難しい」といいます。しかし、長期的にみて透析が必要になると、医療費がかかるだけでなく、時間や身体の負担も大きくなります。ぜひ薬で治療ができる間は薬でしっかりと治療を続けることがよいのではないでしょうか?
一方、全国ベスト1位の神奈川県は、早い時期から以下の対策を実施し、成果を得ています。
・「糖尿病連携手帳」の普及
・「かかりつけ医」と「専門医療機関」の医師などが、糖尿病患者さんの検査結果や治療方針を共有し、協力をして患者さんの治療をサポートする循環型のシステム「糖尿病地域医療連携クリティカルパス」の導入
(参考)II 安心・信頼の医療の確保と予防の重視|厚生労働省
・糖尿病予備群と指摘された人に早い時期で食生活指導を行う
大切なのは治療の継続!合併症を防ぐためにできることでもお伝えしましたが、早期から治療を継続し、良好な血糖コントロールを維持することで、糖尿病の重症化や合併症を予防することができます。
神奈川県は、県内の医療機関や薬局に協力してもらい「糖尿病連携手帳」の普及を進めているようです。都道府県によって糖尿病対策にも大きな差があるんですね。
「2015年人口動態統計月報年報」によると、死亡数の死因順位は
(1)悪性新生物(がん) 37万131人
(2)心疾患 19万5,933人
(3)肺炎 12万846人
(4)脳血管疾患 11万1,875人
(5)老衰 8万4,755人
となっています。
糖尿病が原因の死亡者数は1万3,307人と悪性新生物や心疾患などに比べると多くはありません。しかし、実際には糖尿病(高血糖)や高血圧がそれら死亡者数が多い疾患に悪影響をもたらし、重症化するケースが多く、最近の研究では、糖尿病はがんの発症リスクを上げることも明らかになっています。
つまり、糖尿病による死亡者数には表れない形で、糖尿病は様々なところに悪影響を及ぼしているのですね。
糖尿病の治療の目的は、糖尿病合併症を防ぎ、健康な人と変わらない寿命と、日常生活の質(QOL※)を維持することです。
※QOL:クオリティー・オブ・ライフ=生活の質。人生を享受しているか、生活に充実感があるかという水準。
今回のランキングを見ると、しっかりとした糖尿病治療を実現するためには、個人の力だけではなく、地域ぐるみの対策が必要とされているといえるのではないでしょうか。
※引用元:糖尿病ネットワーク
糖尿病の最新全国ランキング ワーストは青森県 ベストは神奈川県 - 2016年06月10日
http://www.dm-net.co.jp/calendar/2016/025533.php
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