コラム
2013/06/20

専門家インタビュー Vol.5 後編【お互いに影響しあう糖尿病と歯周病】一般財団法人サンスター財団附属千里歯科診療所歯科衛生士河津麻里さん

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Vol.5【お互いに影響しあう糖尿病と歯周病】
一般財団法人サンスター財団附属千里歯科診療所歯科衛生士
河津麻里さん

河津さんは、診療所で、特に糖尿病の患者さんの処置を担当し、60名ほどの患者さんに治療・指導をおこなってきた歯科衛生士。過去の治療のデータから、歯周治療によって糖尿病がよくなった結果をまとめ、学会で発表した経歴も持っています。日々の勉強と治療・指導の中で、糖尿病と歯周病、一見遠いように見える両疾患が互いに影響を及ぼしあっていることを実感したという河津さんが、お口の病気、オーラルケアが糖尿病に及ぼす影響や治療についてお話しします。

たまき
今回は意外に知られていない糖尿病とオーラルケアの関係について歯科衛生士の河津さんにお話を伺いました。 日々継続的にオーラルケアを行うことのメリットや糖尿病患者さんへのアドバイスもいただきました。

全身の状態にも気配り。お口の病気も全身と関連。

たまき

糖尿病の状態についても歯科医院でお話しすると良いのですね。

河津麻里さん

はい、むしろ、必ずお話ししてください。たとえば抜歯や歯石除去など、出血をともなう治療の場合、全身の状態を把握していなければなりません。また、糖尿病の状態が悪いと、歯周病の治療をしても治りが遅いことがあります。ですから、糖尿病の自覚がなくご来院された方でも、治りが遅いと、病気からくるものなのかも? という目をもって、全身の状態をヒアリングすることもあるんです。

たまき

お薬についてもお話ししたほうがいいのでしょうか?

河津麻里さん

そうですね。歯科治療の後はしばらく食事が取れないこともありますので、使用されている薬によっては低血糖の発作を起こす可能性があり、事前に対処の仕方を確認する必要があります。糖尿病患者さんの場合、専用の問診票で糖尿病の状態などはヒアリングしています。お口の病気だからといって、口腔内だけを見ていればいいわけではないのです。

たまき

その問診の答えによって治療の方法が大きく変わることもあるのですか?

河津麻里さん

治療の方法は、自宅でのケアと同様に、糖尿病の患者さんだからといって特別に違いがあるわけではありません。しかし、「全身の状態を把握する」という点については気をつけていますし、体内の病気を悪化させる因子だけでなく、生活環境にも注意が必要だと思っています。たとえば、ずっと専業主婦だった方が急に働きに出るようになって食事や生活のリズムが不規則になる、といった変化だったり、治療後しばらくすると気がゆるんでしまってお口のケアを怠ってしまう、といった変化です。糖尿病も歯周病も“生活習慣病”ですから、日々の習慣や環境の変化が、症状にあらわれてきます。ですから、変化に気づいたら、「何かありましたか?」と他の患者さんよりコミュニケーションを多く取って変化を把握し、指導や治療に生かしていけるように気を付けています。

たまき

そうですね。
生活環境が変わると、知らずしらずのうちに、生活習慣に影響が出てしまうかもしれません。

河津麻里さん

それでも、一度しっかりと歯周病の治療をして、その後その状態を維持できている方であれば、生活環境や体調の変化によってしばらく十分なケアができなくなったとしても、急に悪化することは少なく、比較的良い状態を保てるように感じています。

たまき

早めに治療を受けること、悪くなる前に診てもらうこが大切なんですね。

オーラルケアに前向きに取り組んでいただけるように。

河津麻里さん

しかし、糖尿病の場合、なかなか歯科に定期的に通うということが難しいことはよくわかります。私自身、身内に糖尿病を患っている人がいるので、その生活を間近で見ていて、治療の大変さを実感しています。ですから、まずはご来院されること自体が素晴らしい一歩なんです。それを理解した上で、患者さんのモチベーションを高めていけるような治療をしていきたいですね。

たまき

診療所で、ほめられたり、大丈夫と言ってもらえると、やっぱりうれしいし、ホッとするものですよね。

河津麻里さん

うまく食事ができない状態から日常の生活が送れるようになった方がすごく喜んでくださったり、継続して通い、ケアを続けてくださる患者さんが徐々に増えてくると、やはり私自身も嬉しいです。糖尿病の担当としてたくさんの患者さんと接することで、自分自身の知識の幅も広がり、多くのことを勉強させていただきました。これからもますますパワーアップさせていきたいですね。

たまき

糖尿病のことを良く知っている歯科衛生士さんがいるのは心強いですね。
本日はどうもありがとうございました。

アドバイス

糖尿病の患者さんによくあるお悩みへの対処法

糖尿病の患者さんに多いお口のお悩みを症状別にまとめました。
お口のケアも糖尿病とうまくつきあう方法のひとつ。ぜひ参考にしてみてください。

  • 口臭が気になる

    病気の影響から、糖尿病患者さん特有の“アセトン臭”の場合、または、歯周病で口臭が強い可能性があります。糖尿病が原因の場合もありますが、まずは歯周病を疑ってケアしてみましょう。

    歯の磨き方は基本的に自己流だという方は多いはず。自己流だと、いつも同じところをみがき残している可能性があります。自分の歯並びに合ったみがき方を、きちんと歯科医院で指導してもらいましょう。歯ブラシの選び方も、柔らかさやサイズ、毛丈など、お口の状態に合わせたものをアドバイスしてもらうのがいいですね。炎症が強い時には、デンタルリンスを補助的に使うのもよいでしょう。

  • 口が渇く・ねばつく

    糖尿病特有の症状といえます。また、口が渇くと菌が繁殖しやすいため虫歯になりやすくなっています。

    効果の実感は個人差がありますが、ジェルスプレー等による保湿ケアが有効な場合があります。虫歯の予防には、フッ素が入っているハミガキなどを使用しましょう。また、高齢者の方は、少なくなった唾液の分泌量をあげるため、唾液線のマッサージなども有効です。

  • ハグキの腫れ・出血・膿

    口の中で炎症が起こっている、歯周病の代表的な症状です。

    歯科医院へ行き、治療方法を指導してもらいましょう。腫れがなかなかひかないなど、治りが遅い場合は、全身の免疫機能が崩れていることも考えられますので、全身の状態も観察し、場合によって内科も受診しましょう。

※このコラムは、「糖尿病とうまくつきあう」サイトに掲載されたものです。
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