コラム
2022/08/01

人生100年時代、その時のために今、私にできること。Vol.2 母としてパン屋として届けたい思い

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私達は生まれてから死ぬまで食べて、しゃべって、笑います。人生100年時代に、自分らしく輝き豊かな人生を送るためにも、お口のケアを大切にしてほしい。

そんな考えのもと、「100年mouth 100年health」をテーマに、100年人生を楽しむためお口とカラダの健康習慣を実践している方へインタビュー。みなさまと一緒に「100年人生の楽しみ方」を考えていきたいと思います。

第2回は、パン屋という仕事と、男の子の母。ふたつの顔を持ち日々奮闘する女性のお話です。

「100年mouth 100年health」とは?>>

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多忙だからこそ大切にしたい子どもとの時間

今回登場いただくのは藤森もも子さん。都内で3軒のブーランジェリー、パン屋をプロデュースするほか、PRコンサルタント、システム会社の運営などの顔も持ち多忙を極める毎日。その活躍ぶりでメディアにも登場するなど注目を浴びる一方で、小学6年生の男の子を育てるシングルマザーでもあります。忙しさの中でもできるだけ母子の時間を取りたいと、いろいろな決め事をされているようです。


父はフランス農務省より農事功労章を授与されるなど、長年にわたって日本でパンとその文化を普及させた第一人者、藤森二郎さん。父と父のもとではたらく職人たちの素晴らしいパンに囲まれて育つ。当初は別の道を目指すもやはりパンの道へ。

「息子も中学受験を控えて塾通いなど忙しくしています。塾のない日は私も仕事を切り上げ、仕事でのお付きあいもお断りしてなるべく早く帰宅し、一緒に過ごせるようにしています」

塾のある日は、夜10時ごろ息子さんが帰宅。この時もできるだけ先に帰るようにし、夜食の準備を。「手っとり早いのは店の残り物のクロワッサンなんですけど(笑)。でも夜遅くに砂糖が入っているものは歯に良くないですしね。バゲットにハムを挟んだものやうどんといったものなど、簡単なものですがちゃんと用意するようにしています」

今日の仕事を引きずり、明日の仕事のことも考えながらの日々では、それも大変なこと。それでも藤森さんが息子さんを見守る時間を大切にしているのは、2年前にきっかけとなる出来事があったからです。

歯科医師からの胸に刺さる一言

「最近、何かありましたか?」。母子で定期的に通うかかりつけの歯医者さんにそういわれたのは、息子さんのお口の中にたくさんの「むし歯」があったからです。

「お口のケアには母子揃って気をつけていて、息子は一切むし歯がなかったんです。でもこの時期、私は新規開業に追われていたこともあって、歯科検診が1年ぶりで。それまでは1ヶ月に1回通っていたのですが…。1年で上下に何本もできてしまっていてショックでした。ちゃんとやっていたつもりと歯医者さんにいったら“ちゃんとしていたらこうはなりません”といわれて…ぐうの音も出ない。子どもの状態は母の通信簿だとも思っていたのでその日は泣きました」

歯科検診に行っていなかった1年間も、忙しさをいい訳にしないよう、一緒にいられない時間でも大丈夫なように、息子さんの日々のルーティーンも綿密に計画を立てていたという藤森さん。でも目の届かないところで「寝る前の飴1個」や「間食のバナナ」があり、その後のうがいや歯みがきがおざなりになっていた…。その積み重ねがあったことに気づきます。

歯医者さんから、息子さんの精神面、環境面の変化について聞かれたこともあり、それまでの1年間を振り返った藤森さん。「もう少し、息子と一緒にいられれば」という後悔が。また、自身の多忙に伴う心とカラダの疲労、疲弊も影響があったのではないかと悩んだそうです。

「親子は鏡。子どもが良い結果を学校で出せた、頑張った。その時、きっと私も頑張っていた。子どもが病気なら私が調子を悪くさせちゃっていたし、子どもに笑顔がない時は、私が笑顔にさせられない、何か殺伐とした空気を出していたんじゃないか。歯も痛かったようなんですが、それをいい出せない状況にしてしまったんじゃないかと反省しました」


いつでもお互いに話せる、打ち明けられる家でありたい。だから2人の時間を大切に。「好きな子ができたらすぐにいうんだよ、っていってます(笑)」。2018年ごろ、宮古島にて。

もちろん子どものむし歯の理由はひとつではありません。ただ、この時の歯医者さんからの厳しい言葉は「母としての目覚めになり、ありがたかった」と藤森さんはいいます。

「私は“人間パワースポット”でいたいんです。今日、私と会った人は、明日から頑張れるっていってもらうためには、メンタルもフィジカルもいつでも元気でいたい。だから息子にも、かかわった人がみんな元気になってもらえるような人でいてほしいですね。そのために一対の鏡として、この先も一緒に健康でありたいと考えています」


子育てにもがきながらも、だからこそもっと仕事を楽しく、美しく。その姿がきっと彼の笑顔につながるのだから。

藤森さんは職業柄「見られる」ことも多く、歯のケアについては「美しさ」も含めて入念にケアをしてきました。しかし、この出来事を機に息子さんの成長、メンタルを知る上でも、お口の健康への意識がより高まったそうです。

「この先、息子がおじいちゃんになった時でもおいしく食事ができて、健やかでいられるように、今、一緒にいる時間、一緒にお口をケアする時間を大切にしたいと考えてます。もし自身が100歳まで生きたら息子は70代。その年齢になった時に、親子一緒に“人間パワースポット”といわれていたいです」

パンを通じて100年生きる時代を豊かにする

これからの100年を生きる時代。息子さんと心身ともに健康であり続けることと同時に、藤森さんはパンを通じて、多くの人に笑顔を広げたいと考えています。

「私は二代目。父はガストロノミック(美食)としてのパンを広めてきました。私は、そこに健康的な要素などを取り入れていきたいと思っています。邪道とはいわれますけど(笑)」

小麦、砂糖、バター、クリームがたっぷり入った美食のパンもおいしく、豊かな時間を過ごせる大切なもの。一方、今の時代、低カロリーで高タンパク、食物繊維が豊富というようなヘルシーな要素、それに加えてアレルギーについての配慮も大切です。


藤森さんが手掛ける3軒目は「FUJIMORI R&D」(東京・用賀)。今年4月にオープン。パン食、パン文化のこれから先を考えるための思索と実験の場所でもあります。

「私自身、母親のもとを離れて暮らしているうちに、ナッツやカフェオレなど好きなものばかりを食べる習慣が身についてしまい、逆にそれらがことごとくアレルギーになってしまいました。家で母の食事を食べていた時は、知らず知らずのうちにバランスの良い食事になっていたんだなと思いました」

自身としても、母としてもアレルギーは身近なこと。悩みながら、でも、パンを食べたいと願っている人は、これからもっと増えていくのではないか。我が子だけではなく、自分がプロデュースするパンを食べてたくさんの家族に幸せになってほしい。

でも、だからといって健康に関することは押しつけてはいけないと思う。それが藤森さんの考えです。だからこそ、グルテンフリーの新しいパンと、昔ながらのクリームパン、ブランドバターをふんだんに使った高級食パンを一緒に並べるスタンスを続けています。


グルテンフリーのパンという新しい試み。「寿司でいえばシャリも魚もない。これはパンじゃないといわれることもありますけど」(藤森さん)。しかしこれも本格的なフランスのパン、おいしいパンという文化を広め続けてきた藤森ファミリーだからこその、これからのための挑戦。


「多彩なパンを提供し続けていくこともまた大切なことだと考えています」(藤森さん)

100歳のおじいちゃん、おばあちゃんから、その子ども、お孫さん、そしてこれから生きていくひ孫ちゃんが、パンを通じて当たり前のように一緒に過ごせる時間を創ること。これからも変わっていく時代にあわせて、自身が感じたことをパン作りに反映していくこと。健康を意識しすぎて無理に取り込むのではなく、おいしい時間を通じて楽しみながらカラダに良いものを食べていただけるような商品展開をしていくこと。それは、これからの時代を生きていく人々への藤森さんからのエールでもあるようです。

母として、そしてパン屋として笑顔やパワーを届ける存在でいたい。そんな願いを込めて藤森さんの多忙な日々は続きます。

取材・記事 岩瀬大二
撮影 石原敦志

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